高砂神社能舞台鏡板の松影向の松)を描く



自宅で能舞台の鏡板の松を描きました。(2013.8.18に描き終わりました)

とても貴重な機会で、高砂の方々に愛していただける「」になるよう、松を育てるように描きました。


「松」が大好きな高砂の方々が「松」をとても大切にしておられることを強く感じながら描きました。
高砂にゆかりのある地の土や石を用いて「高砂ならでは」の松を描いたつもりです。
時を重ねた後の未来の高砂の方々にも大切にされ、愛されることを願って描きました。

ーー・今までの板絵制作と同じように、土と石を粉にした自家製の絵具で描きました。ただ、松葉のみどり色だけは、
   緑青(くじゃく石)を粉砕したものを購入し、粉にして描きました。


  高砂神社能舞台の松の制作風景(前編)



 ◆ 「」ができました。(8月3日)  → 松の完成
 ◆ 「竹」ができました。(8月18日)  → 竹の完成
 ◆ 「鏡板」を送りだしました。(8月26日)  → 鏡板、送りだし

 ◆ 新能舞台の竣功祭が行われました。(9月16日)  → 竣功祭


 ●2013年5月12日に描きはじめました。
 ●描きはじめ〜位置取り(5月27日)


 大まかな位置取りを決めている途中の状態。(描きはじめて、2週間ころ)
 阿蘇山の石(赤い石)を粉にして描いています。
 (写真の鏡板は、5分割のうちの中央とその右側です)



 ●位置取り〜松全体の形状の調整(6月3日)

 松全体の形をイメージして、松葉の部分の部分を大きくしました。
 (写真の平置きされている鏡板は、5分割のうちの中央の上部分です)



 ●松全体の形状の調整〜地塗り(6月9日)


 鏡板全体、能舞台に納まった時のバランスを想像して、
 形状の修正や調整を繰り返し、地塗りをはじめました。(描きはじめて、4週間ころ)
 加古川の砂(ベージュ色)を粉にして塗り重ねています。
 永い時間の波を乗り越えれるように丈夫な下地をつくっています。
 (写真の平置きされている鏡板は、5分割のうちの中央です)



 ●松全体の形状が確定しました(6月24日)

 輪郭のように見えている赤い部分は阿蘇山の石の色です。
 内側のベージュ色は加古川の砂の色です。
 修正を重ね幹は太くなり、最後の最後で松葉の集まりを追加し、松の形がかたまりました。
 蝶の幼虫が「さなぎ」になったような印象があります。
 明日から松葉を描きはじめます。
 (写真は、5分割のうちの右から中央の3枚分です)



 ●松葉、幹の木肌を描きはじめました(6月28日)


 伊豆半島戸田(へだ)にある砂州で拾った浜砂の色です。
 地塗りの上にテンポよく松葉を描くように心がけながら、
 一枝一枝の流れ、個々の松葉の声を聞きながら描き進めています。



 ●松葉、幹の木肌を描き進んでいます(7月1日)

 急激な変化です。
 松葉がいっせいに声を上げ、幹が低い声を発してくるのを感じながら、描いています。
 「さなぎ」から羽化する蝶やトンボ、トビケラのように、鏡板の各所で、
 ゆったりとした、激しい、変化が起こっています。
 早く、仕上げたくなる気持ちを抑えて、「羽がピンとのびるまで」じっくり描き込みます。



 ●松葉、幹の木肌を描き進んでいます(7月4日)

 松葉の声は、描き進むにつれ、徐々に落ち着いた声になり、穏やかな空気が流れました。


 ●仕上げ塗りをはじめました(幹の樹皮の部分)(7月7日)

 描き込んだ幹の木肌の部分に仕上げ塗りをはじめました。
 年月を重ねて成長した重厚な樹皮を表現する為に、
 木肌の線画の黒色のまわりに、加古川の砂のベージュ色を重ねています。
 そのベージュ色のまわりに、黒い浜砂の色を重ねて・・・。
 色を重ねることを繰り返し、樹皮を成長させます。
 (松葉の緑の仕上げは、幹の後に行います)


 検討用に引いた木肌の下描きがたくさんあります。



 ●幹の樹皮が部分的に仕上がりはじめました。(7月10日)

 木肌が部分的に仕上がりはじめました。
 加古川の砂のベージュ色は、
 粉にする程度によって、白っぽくなったりもします。
 (幹が全てこの段階になるのには、あと数日かかります)


 また、コケも生えはじめました。



 ●幹の木肌が徐々に仕上がってきています。(7月12日)

 「を育てる」ように描いて来ました。
 今日初めて「もう松が大人になっている」ということを感じました。
 (本当は数日前に大人になっていたのかもしれませんが、
  気づくのが少し遅れました。)
 後は、もう手厚くしなくても、自身が立派に成長されるのだと感じました。


 ●幹の木肌が仕上がりました。(7月16日)

 (上の写真は、各板を写真にとり、合成したものです。)
 木肌のベージュ色は加古川の砂です。
 とても美しく、清らかな印象があります。

 コケは松葉と平行して仕上げます。



 ●松葉を仕上げはじめました。(7月19日)

 加古川の砂の上に、湘南、大磯の砂を塗っています。
 緑色のくじゃく石を塗る準備段階です。

 松葉が力を増していっています。

 自分の足がすくみ、平衡感覚も薄くなる瞬間がちらほらあります。

 貴重な感覚を噛み締めながら描きます。
 こんな経験が出来ることに感謝しています。



 ●松葉に緑青(くじゃく石)を塗りはじめました。(7月21日)


 松葉が少しずつ緑色になって来ました。

 松葉のひとかたまりが山のようにも、島のようにも感じられます。
 山々や島々の樹木が緑に茂るように、緑色が広がります。


  〜余談です〜
   約22年間「土と石で描く」日本画の活動をしてきました。
   今まで、土や石の色だけで描いてきましたので、
   自家製でない絵具という意味で、今回の緑青が初めての「色」です。



 ●松葉に緑青(くじゃく石)をほぼ塗り終えました。(7月27日)

 松葉の緑色を塗り重ね、徐々に濃くしました。

 くじゃく石と大磯の浜砂をあわせて粉にしました。
 くじゃく石の粉にする程度によって
 部分的には白っぽい緑になった部分もあります。

 徐々に「」の完成が近づきました。
  松葉の線をとびっきりの粉にしたくじゃく石で描いたら完成です。



 ●松葉の仕上げ(線描)を行っています。(8月1日)

 松葉の緑色ベースの上に松葉の線を描いています。

 「松葉の線をとびっきりの粉にしたくじゃく石で描いたら完成」と考えていたら
 まったく良い感じになりませんでした。ので、
 さまざまな濃淡の緑色で描くことにしました。
 (くじゃく石と戸田の浜砂を配合しました)

 <一つ一つの松葉枝がおのおの「がんばっている」ように描こうとしています>


 ●「」ができました。(8月3日)

 松葉を濃淡で描き込み、色を重ねました。

 それぞれの松の若枝、松葉が上へ上へとのびていっている様を目指しました。

 くじゃく石はとことん粉にすると、白に近い色になります。
 伊豆半島の戸田の浜砂は、黒い中にほんのりと赤みがあり、
 緑色との相性がとても良く、がんばってくれました。

 描き終わりは、何か特別な感じがあるのかと思っていましたが、
 淡々と描いているうちに、描き終わった。という感じでした。


 >この後、側面の「竹」の面を一気に描きます。


 ●「竹」を描きはじめした。(8月5日)

 ●竹の位置取り〜塗り重ねています。(8月6日〜14日)

 ●「竹」ができました。(8月18日)

 ●鏡板を送りだしました。(8月26日)

 ⇒ ⇒ ⇒ 能舞台完成までの続きは、 「竹」「能舞台の完成」編 へ




 10月19日に高砂観月能が行われます。

        「高砂の方々に永く愛されますように。」



  この後も能舞台でお能が舞われるまで、記録をのせていきます。



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お立ち寄り下さり、本当にありがとうございます。

更新 2013年9月30日      つちといし 福井安紀

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